長期的な為替の変動は、国際的な経済の変動よりも外部要因が多過ぎるため、専門家でも予測が大変難しいもの。
そのため、為替ヘッジにより資産評価を分散する必要があります。
本記事では為替ヘッジとその具体例、キャリートレードのメリットなどについて解説したいと思います。
為替ヘッジとは
「為替ヘッジ」とは、ドルや円の価値変動によって資産評価額が影響を受けることを回避するための仕組みです。
ドル高やドル安などの局面に合わせて、自身の資産評価が大きく上がったり下がったりしないよう、ドルと円のバランスを考えて保有するなどして対策します。
2010年代まで「1ドルは100円前後」というのが日本での一般的な認識でしたが、2024年には、1ドルは160円にまで達しました。
米国株式を保有している方であればドル高円安により為替差益分の恩恵を受けるので、資産評価は+60%ほど増加しますが、新たに米国株式を購入する時には円安の影響により購入金額に対して+60%程の円が必要となります。
つまり、大きな為替変動が起こると大きく損をすることも得をすることもあるので、資産評価額は大変不安定な状態となるのです。
しかし、その状況を見越して事前に対策を行っておくことで、資産評価額の変動率は下げられます。これが為替ヘッジを行う理由です。
FXを利用した為替ヘッジ
いちばん簡単な為替ヘッジの方法は、「ドルと円を半分ずつ保有すること」です。
仮に100万円の現金があるならば、ドルと円をそれぞれ50万円分ずつ保有することで為替変動による通貨価値の変動率を半分に抑えつつ、資産評価額の安定を図ることができます。
一般的には外貨預金口座を開設してドルを保有するケースが多いようですが、私の場合は取引の手軽さと取引コスト的なメリットから、FXの仕組みを活用した為替ヘッジを行っています。
FXの仕組みを利用した為替ヘッジの具体例を説明しましょう。
仮に「100万円の資産を分散するために50万円分のドルを保有したい」と考えたとします。
現在のドル円レートを150円とすると、50万円で購入できるのは約3,333ドル。MT4をベースに取引量を説明すると、「0.03Lot(3000通貨)でUSDJPYをBuy」ということになります。
これに加えてFX口座で取引を行った場合はスワップポイント(利息・利ザヤ)が付くわけですが、外貨預金より明らかに高いスワップポイントが付き、なおかつ取引手数料も外貨預金と比べ平均で10分の1程度と非常に安く抑えられます。
ちなみに外貨預金の手数料が高いのは、外貨預金を運用する銀行の中抜きが非常に高いことが原因です。
また、FXではレバレッジをかけることで上記以上を購入する事も可能です。
今回の例では為替ヘッジの説明をわかりやすくするためにレバレッジを1倍としましたが、状況によってはレバレッジをかけて購入することもひとつの手だと頭に置いておくと良いでしょう。
キャリートレードとは
「キャリートレード」とは、低金利の通貨で資金を調達し、調達した資金を高金利の通貨で運用することにより収益をあげる手法のことです。
為替ヘッジもキャリートレードも行っているのは「低金利の通貨で資金を調達し、その資金を高金利の通貨で運用する」ことです。まったく同じと言ってもいいでしょう。
では何が違うのかというと、為替ヘッジはあくまでリスク回避を目的としたものでスワップポイントは副産物的に得られるものであるのに対し、キャリートレードは「スワップポイントを得ること」を目的として行うところが大きく違います。
つまり、「目的の違いによって言葉が変わっている」ということです。
また、キャリートレードはいちど取引を行ったあとは、基本的にはポジションを放置することが一般的なのですが、とは言え「トレード」であるという目線を持っておけば、追加で収益をあげられるチャンスが訪れることもあります。
例えば、一旦価格変動が落ち着く傾向にあると言われているラウンドナンバー(今年であれば160円など、一般的に決済を行うのにキリが良いとされる水準)に価格が到達した時などは、取引しているポジションを一旦閉じて、その後1日程度様子をみてから購入することで、より安い金額で購入できるかもしれません。
もちろんそのまま価格が上昇してしまうリスクもありますが、為替ヘッジを行いながらより安い金額で購入し、為替差益を追加で得られるチャンスとも言える場面です。
リスクに対する考え方
このように、為替ヘッジを行いたいと思うのであれば、キャリートレードを活用して為替の変動リスクに対処していくことが有効です。
ただ、変動に関してあまり過敏になり過ぎるのも考えものです。
基本的には、「ドルと円の両方をバランス良く持っておけば、どちらの通貨価値が大きく変動したとしてもある程度影響を抑えられる」程度の温度感で考えておくのが良いと思います。
特に現在の日本は国力が衰退しつつあるため、今後もより一層円安が進む可能性をはらんでいます。それは同時に、外国の株式や債券などの投資商品も徐々に買いづらくなる可能性が高まっているということでもあります。
時流に合わせて、その時々の先がどうなっていくのかを考えながら動くこともまた、リスクヘッジのひとつなのではないでしょうか。